About An Artist : Bernard Palissy ベルナール パリシ―
12月に上野の東京都美術館行われていた『メトロポリタン美術館展』に行きました。コレクションの幅広さは百科事典のようですごかった。展示は、例えば「海と人間」というテーマの元、コレクションの中からメトロポリタンの担当者が選りすぐった作品を日本に持ってきたということでした。見る側としては、まったく時代の異なる作品が隣同志に飾られており、おもしろい体験。歴史や美術史を思い出したり、関連作品を思い出したりと頭の体操となりました。いつかアメリカのメトロポリタンに行ってみたい。
今回特に、興味深かったのは、数年前から気になっていたベルナール パリシ―の陶器の実物を見ることが出来たこと。
ぬめっとした蛇やカエルが皿の上に。初めは、びっくりするが、よく見ると本物をよく観察して作られていることに感心。山の中の沢の側を歩いている時、ふと足元を見た時の景色のようで思わず、じっと見つめてしまいました。
特に美しいのは、それぞれの動植物ならではの色や質感がキラキラ光るつるっとした色ガラス釉で表現されていること。
私が、はじめてパリシーについて、知ったのは、アンティークをリプロした Barbotine という製法で作られた皿を購入してから。これは、緑色のガラス釉がレリーフの凹凸に入リ濃淡が出来て美しいもので、その製法を調べていて、彼の名前に行きつきました。
パリシ―は16世紀のフランスで色ガラスの釉薬の研究をした人物とされている。レリーフについては、実物の動植物から型取りし、作陶しているとのこと。Slipcastingという液状にした粘土を流し込み、水分を飛ばし、型からはずす製法と私は考えます。
当時のフランスでは、キリスト教のプロテスタントが入ってきて、パリシ―も改宗。しかし、プロテスタントへの国王側からの弾圧が行われ、最終的には、パリシ―も投獄の末、そこで病気のため亡くなりました。
けれど、彼の作品は、弾圧側のアンヌ ド モンモランシ‐元帥やアンリ2世の妃のカトリーヌ ド メディシスにも認められ、彼らの庇護を受け作陶しました。おもしろいのは庭園の一部である陶製洞窟(エクアン)を依頼されていること。
そのことを裏付ける事実として1983年から1990年に行われたルーヴル美術館の大工事の際、パリシ―の工房が発見され、たくさんの陶片の中に、エクアン用の装飾用陶片もたくさん発掘されたそうです。
パリシ―の工房で作られたエクアンなんて、ぎょっとしそうな空間となっていたでしょう。
今、『陶工パリシ―の博物問答』というパリシ―自身が1572年に書いた本の翻訳本を読んでいます。
化学や地学、生物学などが現代のように確立されていなかった時代に自然をよく観察し、「どうして?」と疑問を持ちながら探究していく姿がその文章から伺え、人間として親近感を持ちながら、読み進めています。
今回のMetのコレクションのようにパリシ―の作品は、ルーヴルやエルミタージュなどにもコレクションされているようです。
いつか日本でも『フレンチ ルネッサンス ベルナール パリシ―の世界』なる展覧会が開かれると面白いと思っています。
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