平山 郁夫展 : Beautiful Things
日曜日、東京国立近代美術館にて行われている平山 郁夫画伯の展覧会に行きました。サブタイトル「祈りの旅路」
Ikuo Hirayama A Retrospective-Pilgrimage For Peace
平山画伯は今年、77歳になられたそうです。ちょうど、私の父と同世代であり、両親も絵を見るのが好きだったので、子どもの頃から、何度も氏の日本画を見に行きました。今回は、大回顧展であり、2回、3回と見たものもあり、「あっ!この絵!」とかつての私の記憶もよみがえってきました。
シルクロードを渡るらくだの列を黄土色の山並みと砂漠、そして光りがもれる空を背景に描き、大地の広大さを大画面に表現した《絲綢之路天空》1987年
アフガニスタンの大石仏を描いた《バーミャン大石仏》1968年。この絵をはじめて見たとき、子ども心に「どうして、顔を壊したの!」と人間の野蛮な行為に憤りを感じました。それでも、氏が静かに堂々とこの石仏を描いたことにだんだんと人間の持つ赦しの気持ちと穏やかさを覚えた作品。しかし、タリバンによって、再び最近、破壊されたというテレビ映像を目にした時、世界はまだまだ、争いの耐えない世界であることを痛感したこと。
仏教のこと、お釈迦さまのことを知りたくて、子どもと一緒に読んだ「平山郁夫のお釈迦の生涯」という絵本に納められた素晴らしい絵の一連のシリーズ。特に《入涅槃幻想》1961年は、私の好きな世界遺産になっているスリランカのポロンナルワの石仏の涅槃仏陀のイメージと共通する自然体の仏陀の姿が描かれているもの。お釈迦さまが死を迎えようとしている時、季節はずれの沙羅双樹の花が咲き、鳥、リスなどの動物、慕う人々が、集まってきている様子が描かれています。モチーフとなっている動植物のシルエットそれぞれが、デッサンにデッサンを重ねた末の究極のシルエットであり、美しく自然な配置に構成され、臨終の時を、皆が祈りを込めて見守っている瞬間が伝わってきます。
そして、燃える広島の街、黒いシルエットで描かれた原爆ドームを描いた《広島生変図》1979年 この絵は、今年の夏に広島県立美術館で見たばかりでした。子どもも覚えており、すぐに駆け寄って見に行きました。空も真っ赤な炎で包まれている中、不動明王があの怒った顔で、街を見下ろしています。しかし、この不動明王は、原爆への怒りをあらわにしているのではなく、これからの広島の復興をしっかりと見守っているということを知り、心強い支えを感じた絵。
世界の平和を願う街として美しく復興した広島で、この絵を見たことは、子どもにとっても心に残る経験であったと思います。
静かな画面の中に込めたメッセージを読み解きながら、この展覧会を後にして、お堀の水面を見ながら、「芸術の最終目的は鎮魂だ。」と思わず、つぶやいていました。
平山 郁夫 画伯の画業により、一人の鑑賞者として私にもその時々に、メッセージをいただいたと思っています。ありがとうございます。
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